足の外科について
足の外科は、足首や足の骨・関節・腱・靭帯などの組織の外傷、障害および変形を専門的に診療する分野です。足は体を支える土台であり、非常に多くの骨や靭帯などが関わっています。そのため、より高い専門性が求められる分野です。多くの場合、足に荷重がかかることで足の形が崩れ、歪みが生じ、痛みや変形が現れます。当院では理学療法や薬物療法により足の症状の改善を図るとともに、悪化や再発を予防するため、生活環境や運動環境に関し、様々なサポートやアドバイスも行っていきます。
- 以下のような症状について診療を行います
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- 足首が腫れて痛い
- 足の指の付け根が痛い
- 足の甲が痛い
- 足首まわりが痛い
- 足首の捻挫ぐせがある
- 踵が痛い
- 足の裏が痛い、しびれる
- 母趾(足の親ゆび)が外を向いて、付け根が痛い
- 母趾の付け根がはれて痛い、そり返せない
主な足の疾患例
外反母趾
外反母趾は非常によくみられる症例で、足の親ゆび(母趾)が外側に曲がった状態を指すものです。母趾の付け根が内側に突出し、その部分が靴に当たって赤く腫れ、痛みの症状が現れます。症状が強くなると足の裏にタコ(胼胝)ができて痛んだり、第2趾や3趾が変形したり痛んだり、母趾が第2趾の上に乗ったりします。外反母趾が発生する原因としては、生まれつきの足の形のほか、加齢や靴の形状などが関係しています。男性に比べて女性に多くみられますが、これは先の細い靴やハイヒールなどによるものと考えられています。
外反母趾の治療としてはまず母趾を外側へ圧迫するような靴の使用を避けます。その上で母趾を内側へ引き戻すストレッチ運動、土踏まずや横アーチを高くした足底挿板(医療用のインソール)を患者さまの足に合わせて作成し、使用するといった治療が中心となります。ストレッチ運動としては足の筋力で足のゆびを開く運動や、ゴムひもを両足の母趾にかけた状態で足の間の距離を広げる体操などがあります。こうした保存療法では改善がみられない場合、手術を行うことがあります。
扁平足
足のアーチが無く土踏まずの部分が平らになったものが扁平足です。小児期からあって痛みのないものは問題ありませんが、中年以降で発症する成人期偏平足は、内くるぶし周辺の腫れと痛みを伴うもので治療の必要があります。初期にはあまり扁平は目立ちませんが、進行すると足が硬くなって歩行に支障をきたし、変形の程度によって外くるぶしや足の裏にも痛みが現れる場合があります。
中年以降の女性や肥満体形の方に多くみられ、長時間の立ち仕事、急な体重増加、スポーツによる使い過ぎ、外傷や手術の影響などが原因となります。これらにより足の裏のアーチを吊り上げている後脛骨筋腱という腱が負荷を受け、炎症を起こしたり擦り切れたりして発症すると考えられています。
治療としては保存的療法として装具療法や運動療法があります。装具療法では足の形に適した靴や、アーチ形をサポートする足底挿板を装着した靴を履くようにします。運動療法としては、足の指を曲げたり、つま先で立って踵同士を合わせたり、足の裏の外側を使って歩いたりといったものがあります。なお痛みが強い場合は、非ステロイド系消炎鎮痛薬の塗り薬や飲み薬を使用することもあります。こうした治療で改善が難しい重症の場合は骨や関節の手術、腱移行術を検討します。
モートン病
足の指の付け根の、指と指の間の神経が骨に挟まれることによって障害され、モートン神経腫と呼ばれるコブができる疾患です。第3趾と4趾の間で発症することが最も多く、次いで第2趾と3趾の間で起こりやすくなっています。症状としては歩行時に指の付け根がしびれたり異物が入っているような知覚異常を感じたり、場合によっては画鋲を踏んだような鋭い痛みを感じることもあります。
原因としては幅の狭い靴、ハイヒールを履くなどすることで神経が圧迫を受けて障害されることによります。足の指の神経はそれぞれの指に向かって骨の間をすり抜けるように走っています。骨の間は靭帯によって強く連結されており、狭くなっている部分では外からの圧迫によって神経が障害されやすくなっています。これにより神経が腫れて、神経腫を形成してしまいます。
治療としてはまず幅の狭い靴やハイヒールなどを履かないようにします。さらに中足骨バットと呼ばれるものや、足底挿板を装着するようにします。痛みに対しては消炎剤の内服やステロイドと局所麻酔薬の局所注射を行います。これらの保存療法で改善がみられない場合は手術を検討します。手術では神経腫の切除を行います。
足底腱膜炎
足底腱膜炎は足の裏に繰り返し過大な負荷がかかることにより、足底腱膜と呼ばれる組織とかかとの骨との付着部に小さな傷や変性が起きることで痛みが生じる疾患です。長時間の立ち仕事や歩行、体重増加、合わない靴、ランニングやジャンプといったスポーツなどによる使いすぎによって引き起こされることが多く、かかとの内側前方に痛みが生じます。階段を昇る際やつま先立ちなどで痛みが増す傾向にあります。
中年の女性に発症することが多く、朝起きて最初の一歩で痛みを感じるのが足底腱膜炎の特徴の一つです。歩いているうちに痛みは軽快していきますが、歩行量が増える夕方になるとまた痛みが強くなってきます。ランニングなどでも同様のことがみられます。
治療としてはアキレス腱や足底腱膜のストレッチを行います。両手で足のつま先とかかとを持ち。足の指から足首にかけて反らすよう引っ張ります。その際、足の裏が伸びるようにします。また足に合う靴を履くことが大切で、患者さまの足に合わせた足底挿板を作成し装着する場合もあります。痛みが続くようであれば、非ステロイド系消炎鎮痛薬の塗り薬や飲み薬を、さらに痛みが強い場合はステロイドの局所注射を行う場合があります。また体外衝撃波での治療で症状が改善することもあります。
アキレス腱付着部症
アキレス腱とかかとの骨が付着している部分に繰り返し負荷がかかることにより、炎症や変性が生じて痛みが現れる疾患です。「靴を履くとかかとの後ろが痛む」「仰向けで寝るとかかとが痛む」といった症状がある場合はアキレス腱付着部症が疑われます。
原因としてはアキレス腱と踵の骨が付着している部位に強い牽引力が加わり、お互いに強い圧迫力がかかると付着部に変性を生じ、痛みを起こします。きっかけとしてはかかとの骨や足の形の異常、仕事やスポーツによる使い過ぎ、合わない靴の使用、筋肉の柔軟性の低下などが挙げられます。
治療としては足に合う靴を履く、患者さまの足に合わせた足底挿板を装着するといったことが挙げられます。ほかにアキレス腱のストレッチも行います。痛みがある場合は非ステロイド系消炎鎮痛薬の塗り薬や飲み薬を使用します。痛みが非常に強い場合は、ステロイド剤の局所注射という選択肢もありますが、アキレス腱の強度の低下や腱断裂を引き起こすリスクがあるため、慎重に検討する必要があります。